「赤い悪魔が世界の頂点に君臨」
FIFA CLUB WORLD CUP Japan 2008 Match#8 2008年12月21日 横浜国際総合競技場 決勝 リガ・デ・キト0-1(0-0)マンチェスターU
文:原田大輔 写真:原悦生 渡辺浩樹 原壮史 Text: Daisuke Harada Photo: Etsuo Hara/Hiroki Watanabe/Masashi Hara
全世界30万1000クラブの頂点に立ったのは、欧州王者マンチェスター・ユナイテッドだった。結末は1-0。しかし、赤い悪魔は内容で南米王者リガ・デ・キトを圧倒した。
約6万9000人の観衆が埋めつくした横浜国際総合競技場は、冬至の猛風が吹き荒れた。しかし、マンチェスター・Uの強さは環境にも数的不利にも左右されることなく、世界最高のスター軍団がその実力をいかんなく発揮した。
G大阪との準決勝でまさかの3失点を喫したマンチェスター・Uは、現状で考えられるベストメンバーを組んだ。GKはエドウィン・ファン・デル・サール、DFは右からラファエル、ネマニャ・ヴィディッチ、リオ・ファーディナンド、パトリス・エヴラ。MFには右からパク・チソン、マイケル・キャリック、アンデルソン、クリスティアーノ・ロナウドを配置し、2トップにはカルロス・テヴェスとウェイン・ルーニーが並んだ。
一方のリガ・デ・キトは不動のメンバー構成。ダブルボランチのパトリシオ・ウルティア、ウィリアム・アラウーホが中盤で相手ボールを奪い、小柄なテクニシャン、アレハンドロ・マンソとスピードを武器とするアタッカー、ルイス・ボラーニョスを中心に鋭いカウンターを仕掛ける。準決勝のパチューカ戦では、相手が得意とするパスサッカーに主導権を握られながら、組織的な守備と破壊力抜群のカウンターで2点を奪取。南米予選を勝ち抜いた組織的な守備力の高さを証明した。
戦前の予想では、攻撃力で上回るマンチェスター・Uが有利。マンチェスター・Uがリガ・デ・キトの守備をいかにして攻略するか。焦点はそこに絞られた。
ところが、最初のチャンスをつかんだのはリガ・デ・キトだった。4分、右サイドで得たFKから、マンソがニアサイドにグラウンダーの鋭いクロスを供給。ハイロ・カンポスがフリーでシュートを放つが、これはミートせずゴール左に外れた。
このシュートを機に、マンチェスター・Uが目覚める。10分にはキャリックのロングパスに走り込んだルーニーが鮮やかな胸トラップからシュート。続く11分にはC・ロナウドがFKで直接ゴールを狙い、15分には再びキャリックのロングパスにパク・チソンが飛び込み、こぼれ球を拾ったルーニーが強烈なシュートを放った。
マンチェスター・Uはキャリックとアンデルソンの展開を起点に、C・ロナウドとルーニーが積極的に絡んで多彩な攻撃を形成した。25分までは圧倒的にボールを支配し、小気味よいパス回しから何度も相手ゴールに迫る。しかし、リガ・デ・キトのGKホセ・セバージョスの堅守に阻まれ、ゴールを奪うことができなかった。
対するリガ・デ・キトは、25分すぎからようやく司令塔のマンソがボールに絡み始めた。すると、38分には鋭いカウンターからマンソがドリブルで持ち込み、右足でシュート。直後の40分にはマンソのスルーパスにボラーニョスが反応するが、このパスは惜しくも通らなかった。
後半に入ると、マンチェスター・Uに思わぬアクシデントが生まれる。49分にヴィディッチが相手にひじ打ちを食らわせて一発退場。守備の要を欠いた欧州王者は、テヴェスに代えてジョニー・エバンスを送り込んだ。
しかし、リガ・デ・キトはこのチャンスを生かすことができなかった。その後も主導権を握ったのは、数的不利を強いられたマンチェスター・U。アレックス・ファーガソン監督はC・ロナウドを1トップに据え、ルーニーを左サイドMFに配置。この対応が奏功し、ルーニーが左サイドでキープ力を発揮。ボール保持率の低下を防ぐことで相手に主導権を渡さなかった。
それでも、リガ・デ・キトはマンソを中心にミドルシュートでリズムをつかみかけた。63分にはマンソが強烈なミドルシュート。しかし、GKファン・デル・サールがファインセーブでピンチを脱する。71分にはアラウーホがミドルシュートを放つが、これもファン・デル・サールの牙城を崩すにはいたらなかった。
待望の先制ゴールが生まれたのは73分。マンチェスター・Uはキャリック、C・ロナウドとつなぎ、最後はルーニーが左斜め45度からゴール右隅に決める技ありのシュートを決めた。ファーガソン監督は80分にガリー・ネヴィル、83分にダレン・フレッチャーを投入し、盤石の態勢を築いて逃げ切りに成功。数的不利を跳ね返した赤い悪魔が、ついに世界の頂点に立った。
ファーガソン監督の作戦はこうだ。「規律を持って、失点をしないことを心がけた。忍耐強くいることが大事だった。ロナウドや、ルーニーが特別な仕事をしてくれると期待していた」。そして、大会を振り返ってこう付けくわえた。「キトにはG大阪の遠藤ほどのクオリティーを持った選手はいなかった。ガンバの選手の11人のクオリティーを称えるべきだと思う」。
日本を舞台に繰り広げられた世界一決定戦では、マンチェスター・Uの強さ、そしてその世界王者を本気にさせ、3ゴールを奪ったG大阪の健闘が際立った。
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