Don't shoot a poet!原悦生「ゴール裏の詩」

 

 

Jリーグ。首位の柏と磐田の対戦だった。「節電」ということで、スタジアムの照明は選手入場の直前までつかなかった。暗くなりかけた西の空が赤く染まっていた。印象的な空だった。試合は柏が磐田に3点を奪われて完敗した。 2011年6月15日、柏。

 

赤い空

赤い空 赤い空 赤い空 節電キャンペーンの夏 やっとライトがついた照明塔の向こうで 薄暮の空は 突然 赤く染まった 赤い空の美しさに見とれる 試合を見に来たのに 心はその空の色に奪われている キックオフの笛 午後7時の試合が始まっても 私は まだ 赤い空を見ている 赤い空 赤い空 赤い空 この印象的な空の向こうに 放射能の影を感じてしまうのは私だけだろうか 大きく揺れた 3月のあの日以来 日本は見えない危険の恐怖に脅かされている そう思うと この赤い空も 印象が変わってくる 柏レイソルのホームで ジュビロ磐田のファンの後ろに広がった赤い空を 柏のファンはどんな思いで見ていたのだろう やがて 赤い空は夜空に変わっていく 味方の太陽の力がなくなると トップランナーは力を失った 赤い空 赤い空 赤い空

 

バルセロナとマンチェスター・ユナイテッドのチャンピオンズリーグ決勝はローマの「再戦」。ウェンブレーでも、「世界最強}のバルサが圧倒的な強さを見せつけて4度目のビッグイヤーを獲得した。 2011年5月28日、ロンドン。

 

ウェンブレーも

お騒がせの火山灰に バルサは予定を早めて ウェンブレーに向かう チャンピオンズリーグ・ファイナル バルセロナとマンチェスター・ユナイテッド ローマから2年の時が過ぎた 戦いの物語の第2幕は ロンドンで バルセロナとマンチェスター・ユナイテッド 4度目の欧州王座を狙って ウェンブレーにまつわる2つのチームの物語は 続きを生み出すだろう 振り出した雨は遠慮したように止んだ スクリーンに映し出された人波 駅からウェンブレーに向かう人の波は 遠い記憶の中の風景と重なる WE LOVE FOOTBALL WE BELIEVE 向かい合わせのゴール裏に描かれた人文字 勝負の神はどちらに微笑むのだろう パス それは あまりにも美しすぎて クロス それは あまりにも美しすぎて ゴール それは あまりにも美しすぎた 憂いを帯びたゴールは 赤と白のスター 赤ら顔のサーは もっと攻撃を指示したけれど バルサはウェンブレーをカンプ・ノウに変えてしまった パス パス パス そして パス そして 別の天体からやってきた10番がいた ゴール それは あまりにも美しすぎた

 

10年ぶりにチャンピオンズリーグ準決勝でクラシコが行われた。マドリードでの第1戦は大荒れの試合になって、退席処分のモウリーニョは第2戦に姿を見せなかった。試合開始前から激しい雨がカンプノウに降った。 2011年5月3日、バルセロナ。

 

王者たちのクラシコ

雨 また 雨 そして また 雨 バルセロナは 雨 王者たちのクラシコは 雨の中で マドリードの あの荒れたクラシコを すべて 洗い流そうとしているように  雨は 音を立てて 降っている 白い巨人のボスは ここにいないけれど この激しい雨の中で 彼の顔を 見てみたい と思う 朝 いい天気だった バルセロナは 昼も 晴れていた バルセロナは 自然も 王者たちのクラシコを祝っている と思った それなのに 突然に現れた 黒い雲と 稲妻は ガウディの遺産も カンプ・ノウも  とびっきりの強い雨に さらして見せた 雨よ バルサに味方したのかと 空を見上げる だが 雨は どちらに味方したわけでもないと その勢いを さらに増した また 白い巨人のボスの顔を 見てみたい と思う 雨 また 雨 そして また 雨 バルセロナは 雨 王者たちのクラシコは 雨の中で 続いた 水しぶきは 生き物のようで クリスティアーノは雨に打たれ レオも雨にぬれた そして  ウェンブレーをかけた戦いは 終わった それを 見届けると 雨は満足したように カンプ・ノウから去った

 

UEFAチャンピオンズリーグ。シャルケ-インテル第2戦。内田と長友、二人の日本人がセミファイナル進出をかけて90分フルタイムを戦った。2011年4月26日、ゲルセンキルヘン。

 

日出国の男たち

欧州の王者たちの宴に 日の出国の男たちが 集う いつか こんな日が来ることを願いながら まだ そんな日はやってこないだろうと ひとり 首を振ってみた あの日 オクデラがドイツで戦ってから 何年 カズがカルチョの国にやってきてから 何年 人は変わり 新しい時代に 新しい精神の男たちが 異国の文化の中で出会う イタリアでの出会いは ドイツに国を変えて ミラノでの出会いは ゲルセンキルヘンに場所を変えて ゲルセンキルヘンの夜 アレナに 王者たちの歌が聞こえる 握手をかわし 共に キックオフの笛を聴く 22人の中の2人 日出国の男たちが 戦う 名だたる王者たち宴は 世界中がみているけれど その中に堂々と 日出国の男たち 力とワザを競う 日出国の男たち 頂点を目指した戦い その結果は いつも残酷で 必ず勝者と敗者を生まれる だから いや それでも 日出国の男たちは 抱き合って 笑顔で分かれた